▼まずは軽い自己紹介をお願いします。

 細井です。京都出身。典型的なB型。好きなタイプは女性です。


▼音楽を作るようになったきっかけ、そしてゲームミュージックコンポーザーになった理由を教えてください。

 画家で音楽家の兄の影響で、絵と音楽に興味を持ちました。
 友人宅のパソコンから音楽が鳴っているのを聞き、その新しい音楽のスタイルに衝撃を受け、特に楽器も弾けず、音楽的な教育も受けたわけでもない自分でもこれなら出来ると思い、親にねだってパソコンを買ってもらいました。
 ゲームミュージックのレコードなんかを当時よく聞いており、ゲーム音楽の先進性、インタラクティヴ性に惹かれて、自分で架空のゲームを想定した音楽などを作っていました。ゲーム全体をプロデュースし、その音楽を自分で制作するのが夢でした。
 高校の時に絵の才能がないことに気付き、音楽で食べていこうと決意しました。


▼音楽制作のスタートはMSXからだったそうですが、当時はどのような音楽を作っておられましたか?

 大抵はセガかナムコのゲームミュージックのパクりっぽいのばかりでした。
 架空のゲームのBGMですね。自分でゲームの内容を考えて、気分を盛り上げるためポップや説明書なんかも自分で書いたりして(ぼくはパッケージマニアなので、外箱の装丁考えるだけでゾクゾクしたものです)、そのサントラという感じで作っていました。もっともそのBGMの制作自体も架空のまま終わってしまうことが多かったですが。


▼パクリっぽいとはいえコピーではなくオリジナルだったというのはやはり何かこだわりがあったのでしょうか?パソコン通信時代の細井さんの曲もオリジナルしか聴いた事がないという話を聞いた事があります。

 そもそも絶対音感とかないので耳コピは苦手なんです。カラオケの仕事なんぞをやってた時期はありましたが、個人的にコピーした曲ってのはほとんどなくって、MSX時代に「ぱっつぁんぱしぱし」名義で「パックマニア」「オーダイン」の曲を作って投稿し、「マイコンBASICマガジン」とその別冊に採用されたことがあるくらいですかね。
 コピーは勉強になりますが、やっぱしんどいし、オリジナル作ってる方が楽しいです(^^;


大野雄二(ソニックウイングスリミテッドのCDのブックレットに大ファンという細井さんの発言があります)スティーヴ・ライヒ(Energy fieldサイト内にある掲示板上で音楽的影響に言及)こういった作曲家の、具体的にはどの作品(時期)がもっとも印象的でしたか?またそれ以外に影響を受けた音楽家はいますか?

 ぼくが言うまでもないですが、ルパンは名作だと思います。どの年代('78,'79,'80)のものも全て違った魅力があります。
 ライヒはほとんどのアルバムを持っています。知人宅(今となってはぴろを氏ですが)で最初に「6台のピアノ」という曲を聞いて、こんな音楽が世の中にあったのかとカルチャーショックを受けたのを覚えています。
 兄がやっているチルドレンクーデターというバンドの音楽を幼いころから聞いており、インスト、変拍子、フリー、ミニマル、ノイズなどの土台は彼の音楽で学んだところが大きいかも知れません。
 その他には「ラピュタ」などを手掛けられた久石譲さん、「AKIRA」の芸能山城組が好きです。やはり映像音楽が好きなんですね。芸能山城組の主催する「ケチャ祭り」というイベントに参加して実際にバリ島の民族音楽「ケチャ」をやったこともあります。この経験がのちに「タオ体道」に生かされるわけです。
 後で知ったのですが、久石さんはライヒの影響を受けているみたいで、初期のアルバム「α-BET CITY」なんかを聴くとそれが如実にわかります。また、ライヒはバリ島の民族音楽に傾倒していた時期があったらしく、偶然に驚いたと同時に自分の好きなアーティストはやっぱりみんな同じ系統なんだなと妙に納得感を覚えました。


▼上記の質問と被るかもしれませんが、オールタイムフェイバリットと現在よく聴いている音楽があれば教えてください。

 最近のお気に入りは久石譲さんの「菊次郎の夏」ですね。トヨタのCMでも使われている曲で、すごくキャッチーなんです。映画もすごく面白かった。「もののけ姫」までは完全に飽きていたんですが、最近の久石さんは「歳をとってやりたいことが出来るようになってきた」という感じがして、作られる曲も生き生きしているような気がします。


▼ゲームミュージックというジャンルの中で好きなものは何でしょう? 以前ダライアスの「 Chaos 」を挙げておられましたが、他にもありましたら新旧問わずお願いします。

 細野晴臣さんがプロデュースしていた「スーパーゼビウス」「THE RETURN OF VIDEO GAME MUSIC」なんかは今でも十分に聴き応えがありますね。「THE RETURN OF VIDEO GAME MUSIC」のB面がずっと聞きたかったので、CDで復刻したのはすごく嬉しいです(「スーパーゼビウス」は先日買いました)。
 一番印象に残っているのは「フォゾン」です。ゲームミュージックの全てを最も端的に表現していると思います。最もゲームはやったことないんですが。
 ゲームの仕事に就いてからゲーム音楽を聴くことはなくなったのですが、今でもすごいと思うのはやはり任天堂のゲームですね。「マリオ」や「ゼルダ」は音楽として一級品であるのはもちろんのこと、ゲームとの一体感はぜひ全てのコンポーザーに学んで欲しいところだと思います。もちろんぼくも含めて。


▼細井さんにとって、ゲームミュージックの魅力とは何でしょうか?

 インタラクティヴ性。これに尽きます。プレイヤーの操作によって次々と展開する場面にリアルタイムで追従する音楽、というのは他のジャンルではほとんどないと思います。ただ残念ながらそのインタラクティヴ性を生かしたゲーム音楽は少ないし、そういう意味で自分もまだ満足いく作品は作れていません。


▼そういえば、「マリオ」や「ゼルダ」の近藤浩治さんも、最近のインタビューでインタラクティブ性へのこだわりを強調しておられました。ゲームミュージック全体として見るとインタラクティブな手法はまだ発展途上だと思うのですが、いままでのところインタラクティブ性で印象に残っているゲームミュージックが何かありますでしょうか?

 前に挙げた「フォゾン」は強烈にインパクトがありました。あとはコンシューマになりますが「パラッパラッパー」「マリオ64」「ゼルダの伝説 時のオカリナ」などが印象深いです。「パラッパ」は後に多くのパクりを生んだパイオニア的作品で、世界観やセンスが大好きでした。「マリオ」の洞窟などで流れるBGMや「ゼルダ」のフィールドのBGMはほんとすごいです。「あぁ曲調が変化しているなぁ」とすら思わせない、自然とシーンに溶け込んだ音楽でした。さりげなくものすごいことをやってるってのがかっちょいいですね。

(続く)
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