▼chip音源時代と比べて曲作りで変わったこと、変わらなかったことを教えてください。

 X68000でMMLによる制作から、Macでのキーボード演奏入力に変わりました。音源の制約がなくなった分、逆に音の使い方には神経質になりましたね。もっとも表現したいことは変わっていません。


ソニックウイングススペシャル(SS)のおまけCDでのヴォーカルもの二曲がkalaさんとの初のコラボレーションという事ですが、これはEnergy field結成の2年前にあたる96年に発売されています、そこから結成に至るまでにはどういった経緯があったのでしょうか?

 ぼくにとってこれが歌物初挑戦でした。非常に楽しかったのでぜひまたやりましょうということになって、最初はお遊び的に普通のポップスもどきを作っていましたが、だんだん普段のインスト的な作り方と融合していき、今のスタイルになりました。今はインスト、歌物の区別なく同じスタンスで制作しています。


▼Energy field結成以前と以降とでは、ヴォーカルソングへの気迫が違うというか、kalaさんの存在には恐ろしいほど説得力があると思うのです。ここまでヴォーカルソングにこだわるようになった経緯を教えていただけますか?

 kalaの持つコンセプトが明確で強く、ヴォーカルが入ることでかなり曲に説得力が出ると思います。こけしに顔を入れるというかだるまに目を入れるというか、ヴォーカルが乗って命が吹き込まれるという感じです。聞き手側もヴォーカルという1本芯が入ることで非常に聞きやすく、同じ事を伝えるにもインストより歌物の方がわかりやすいとは思います。ぼくのように幼い頃歌よりインストを口ずさむような子供だった人なら別ですが。
 ぼく自身、kalaのヴォーカルにかなりインスパイアされることが多いです。


▼Energy fieldの楽曲はそれに色を添えるゲストミュージシャンの存在も魅力の一つかと思います、バイオリンの竹内純さんやギターの當間博さんなど生演奏ならではのあじわいですが、ライブやその他ゲーム以外でEnergy fieldが活動する予定はあるのでしょうか?

 ぜひともライブはやりたいです。ある程度曲が溜まって、採算の目処が立ったらすぐにでもやりたいです。ライブでは生の要素をもっと押し出しても面白いかなと思っています。
 ちなみに若い頃は打ち込みに対する過度なこだわりがあって、「生演奏」に負けてたまるかといった感覚を持っていましたが、結局裏を返せば、楽器を演奏できない自分のコンプレックスだったことに気付いたわけです。それからは打ち込みだろうが生だろうが、その音楽に対して必要なものを分け隔てなく選択できるようになりました。楽器を選択するのと何ら変わらないことなんですね。
 ただ、ミュージシャンが使えないから生演奏を模した打ち込みにする、といった消極的な打ち込みの使い方は好きではありません。まぁ予算の関係上よくあることではあるんですが。


▼仕事部屋にあるX68000XVIは今でも活躍することがありますか?

 VIDEO SYSTEM退社後、一度だけ、Z-MUSICを用いて作曲したことがあります。念願のインタラクティブミュージックにチャレンジしたのですが、ゲーム自体がお蔵入りしてしまって日の目を見ることはありませんでした。いずれサイト上で発表したいとは思いますが、ゲームの状況と共に変化していくBGMの迫力はゲームをプレイした時にしか伝わらないのでもどかしいです。
 それ以降は残念ながら使っていないですね。でも、いずれまたZ-MUSICで曲を作ってみたいとは思っています。


▼残念ながら日の目を見なかったその作品の中で、ゲームと音楽がどのような形で相互作用を持っていたのか、概要だけでも教えていだけないでしょうか?

 3DダンジョンアクションRPGです。舞台は思いっ切りファンタジー。剣と魔法の世界です。曲調もぼくの好きなアイリッシュな感じにしています。まだ実験段階ではありましたが、出現する敵、情景、プレイヤーの状態によってBGMの楽器編成、フレーズ、テンポなどが刻々と変化するのが特徴でした。


▼今後どんな音楽をやっていきたいですか?

 ストリングスがもともと好きで、生のヴァイオリンを見るようになってからますますその気持ちは強くなっているのですが、カルテットや小編成のストリングアレンジなんかをやってみたいです。
 それ以外にも、いろんなミュージシャンやアーティストの方とのコラボレーションをしてみたいです。今、人とやるのがすごく楽しいので。


▼気になる同業者さん、またはライバルを挙げるとしたら、どなたでしょうか?

 あまり人と競ったり争ったりしている気はないので特にライバルと思う人はいませんね。すごいなって思う人はいっぱいいますが。


▼最後にVORCらしい質問という事で、細井さんが一番好きな音源チップは何かを教えてください。

 ぼくの原点でもあるPSGですね。かつてピアノは完全楽器と呼ばれたそうですが、PSGは完全音源と呼ぶに相応しい音源だと思います。



取材:Do.

今回快くインタビューを受けてくださった細井聡司氏に感謝します。
メールインタビューという形のため少し質問が一方的ですが、それでも興味深い話が聞けたのではないかと思います、闘牌伝などはこのインタビューの後になんとか入手してその曲を聴いたわけですがミニマルと変拍子だらけのそのスタイルには度肝を抜かれました、サウンドテストもついているので興味のある方は中古ソフト屋を巡るのもよいでしょう。
現在はchip音源を離れ音楽活動を行っている細井氏ですが、インタビューにも「表現したいことは変わっていません」とある通りいつも挑戦的でそして一癖も二癖もある曲作りにはますます磨きがかかっているといっても過言ではないでしょう。
下のバナーからEnergy fieldの公式サイト(Energy field WEB)に行く事ができます、Energy fieldの曲が試聴でき、またコンテンツ中には細井氏やヴォーカルkala氏のコーナーもあり、細井氏の過去の音源を試聴する事もできます。



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